日米共同統合演習「キーンソード21」の拡がりを見る


臥蛇島上陸訓練で編成された日米艦船揚陸艦隊。LCACやオスプレイもいる(2020.11.1 海自広報ページより)


日米共同演習で水陸両用作戦を展開した日米両指揮官(11月1日早朝、臥蛇島で。在日米海兵隊ニュース より)

10月26日から11月5日まで自衛隊37000人、米軍9000人が参加した日米共同統合演習「キーンソード21」。防衛省・統合幕僚監部は、実施場所を下記のように発表していた。
(1) 我が国周辺海空域、自衛隊施設及び在日米軍施設
(2) 種子島及び臥蛇島 (種子島では自衛隊が訓練を実施し、臥蛇島では自衛隊と米軍が共同訓練を実施)

「我が国周辺海域」での行動は原子力空母レーガンとヘリ空母「かが」を中心に艦隊航行を行った。
臥蛇島上陸訓練では、ヘリ空母「ひゅうが」、大型揚陸艦「おおすみ」「くにさき」、ドック型揚陸艦アシュランドが揚陸艦隊を編成した。これはアメリカ海軍も海上自衛隊も多数の 写真を発表している。

しかし、「我が国周辺空域」の方は、宮崎県の新田原基地に沖縄・嘉手納基地のF15戦闘機が展開したことは報道されたが、どのような訓練を行ったのかは発表がない。
「空」については手の内を明かさないということだろうか。

10月23日 宮崎県の空自新田原基地に、米空軍・嘉手納基地のF15戦闘機12機が展開。

10月25日 米海兵隊・普天間基地のMV-22オスプレイ4機が鹿児島県の海自鹿屋航空基地に展開。

10月26日 開始宣言 ヘリ空母「かが」艦上、横田基地から ケビン・シュナイダー在日米軍司令官と山崎幸二統合幕僚長がCV-22オスプレイで飛来。

10月26日〜11月04日 空母レーガンは連日、艦載機の離発着訓練

10月19日〜11月10日 空自航空総隊総合訓練、全国で実施。奄美空港では移動式管制塔が持ち込まれ、空自C-2輸送機、普天間基地の米海兵隊の対戦車ヘリAH-1Z等が展開。

10月26日〜11月05日 厚木基地で第38防空砲兵旅団第1防空砲兵大隊(沖縄・嘉手納)のPAC-3の展開訓練。通信訓練中心か。

10月26日〜11月05日 沖縄のキャンプ・フォスターと普天間基地に「機動戦闘指揮センタ」を設置。

10月27日 大型補給艦「ましゅう」、奄美大島古仁屋沖を航行。11月08日時点で北九州市の沖合いに。8日までの行動は不明。

10月28日 横田基地のCV-22オスプレイが洋上で、捜索救難訓練。

10月29日 海自のSH60Kヘリ、イージス駆逐艦バリーに着艦。クロスデッキ訓練。

10月30日 沖縄金武町レッドビーチ訓練場で、高機動ロケット砲システム、ハイマースの迅速展開訓練(地対地ミサイル、地対艦としての運用も検討中。高機動とはC130輸送機などで輸送 可能という意味)

10月30日頃 種子島に防衛省が年間契約している民間フェリー「はくおう」が、自衛隊の車両と人員を種子島に輸送。帰路は同民間フェリー「なっちゃんワールド」を使用。
南種子町前之浜海浜公園で、水際地雷敷設車の訓練や、水際障害物構築訓練を行った。
種子島には、海自の強襲上陸用舟艇LCAC(エルキャック)も陸自車両を揚陸。陸自の水陸両用装甲車AAV7も上陸した。

10月30日〜11月01日 臥蛇島上陸訓練
@ 水陸両用作戦における護衛艦「すずつき」の艦砲射撃
A 統合後方補給訓練、空自C2大型輸送機で陸自の中距離対空ミサイルのレーダー車を空輸(どこからどこへ輸送したか不明)。
大型揚陸艦「くにさき」から、AAV7が発進

11月01日 鹿児島県の徳之島の防災センタに設置した「野戦病院」に、「戦闘地域」から「負傷兵」を大型輸送ヘリで運ぶ訓練。

11月02日 岩国基地で電子訓練支援機UP-3D等の共同メンテナンス訓練

11月02日 京都府経が岬通信所で、在日米陸軍第14ミサイル防衛中隊、陸自第7普通科連隊(京都・福知山駐屯地)は海上自衛隊・航空自衛隊・アメリカ海兵隊の協力の下、第一線救護、爆発物処理、 ドローン対処や反撃要領などの実動訓練を実施。

11月02日 青森県車力通信所で、在日米陸軍第10ミサイル防衛中隊、陸自第39普通科連隊(青森・弘前駐屯地)が「2国間拘束訓練」など、基地防衛訓練を実施。

11月04日 佐世保基地の横瀬貯油所で、陸自隊員が基地防衛訓練

11月04日頃 横田基地で、日米共同の滑走路修復訓練

11月04日 大分県の日出生台演習場を離島に見立てて、陸自西部方面隊、水陸機動団など4500名が車両1400台を使用して、部隊の配置、陣地の構築などを訓練。

Xバンドレーダが配備されている車力通信所、経が岬通信所で基地防衛訓練が実施されたことは、米軍がレーダー通信などの神経系統の防衛に、相当な力を入れていることの表れである。
艦艇の燃料の防衛のために、佐世保基地横瀬貯油施設でも警備訓練を実施。厚木基地でのPAC-3の展開訓練、横田基地の滑走路修復訓練など、在日米軍基地の防衛、修復訓練も行われた。

中国との対立が深まると在日米軍基地の防衛も考慮しなければならないということだ。

11月4日と5日には、米宇宙軍主催の多国間机上演習「シュリーバー演習2020」が空自・市ヶ谷基地(防衛省敷地内)で実施され、日米に加え、オーストラリア、カナダ、フランス、 ドイツ、イギリス、ニュージーランドが電話会議システムで参加している。
日米軍事一体化は宇宙空間にまで拡大しつつある。

(木元 茂夫)


危険人物を制圧する陸上自衛隊員。佐世保基地での基地防衛訓練(2020.11.4 NAVY.mil PHOTO GALLERY より)


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